ホワイトディは三倍返しって、鉄則?



愛 の 日 



桜のつぼみが膨らみ始め、俺の恋人がこの学び舎を去って早2週間。
本日は3月14日ホワイトディ。
俺の癒しだったトシが居なくなって、毎日仕事の時間はほとんどだるーっとする俺の周りに集まる女生
徒。まあ、こんな状況を見られないでよかったというか、何と言うか。
だが、しかし。ホワイトディだというのに仕事だし、トシは朝からバイトだし。
今日は会えないのだろうな、と何となく感じて電話でもして、無理にでも夜に会いに行こう。
じゃないとお返しは渡せないと思う。
なんせ、くれないと思っていたチョコレートをしっかりと先月届けてくれたのだ。その時は泣いて喜ばせて
いただいた。

「せんせー!お返しは?」
「この袋の中から一人一個持ってけ」
「キットカットじゃん!しかもお徳用!?……しょっぼい!」
「ガキにはそれで十分ですー。先生は恋人には奮発しますー」
「先生恋人いるの!?」
「そ。超かわいいの〜」

ぎゃーぎゃー喚く生徒達が、のろけるなー!と座っていた椅子に一人一回ずつ蹴りを入れられたが、とく
に構いもせずに学校の電力で充電しておいた携帯を開いた。

メール1件。
受信名:トシ
『先に帰って待ってる。』

まじすか!!

「何、銀八。彼女からデスカ〜?にやけてるよー」
「そうそう。恋人からだから!大人の時間だから!」
「変態っぽいよ、ぎんぱっちゃん……」
「いいの。お前ら見ても俺の分身は反応せんもん」
「セクハラ!!」
「ほらほら、ホームルームだろ。俺はせっかく担任っつー呪縛から解放されたの。さっさと仕事して愛する
ハニーの所へ帰りたいの。だからお前らもさっさと教室行け」

椅子から立って、喫煙所でもある教員室のベランダに向かいながら手で女生徒をしっし、と追い払う。文
句を言いながらも、確かに時間がショートホームルームに掛かっていたので素早く教員室から出て行った。
ベランダに出る、扉を開けたすぐソコに座って慣れた手つきで煙草に火をつける。
一息すって、長く紫煙を吐くと落ち着いた。
ぼけーっと赤くなってきた空を見ながら、早く家に帰りたいと心底思う。
ただ、それにはガキ共の成績処理をしなければならない。紫煙とともに溜息もはきだした。

俺が考えた贈り物に、彼は喜んでくれるだろうか。










「おかえり」

さも当然という風に「おかえり」と言ってくれたハニーに意識せずとも顔がにやける。
台所から顔を出しているトシのもとへ、靴を急いで脱いで向かった。匂いから察するに今日はシチュー
だ。彼のお姉さん直伝らしい料理は、最初から最後まで凝っているため本当に美味しい。
鍋の中身をかき回しているトシに後ろからぎゅっと抱きつくと、ヤメロとばかりに肘鉄をくらった。
調理台にはサラダとドレッシングが置いてあって、袋に入ったままのパンも置いてある。
あとは焼くだけって所だろう。

「ただいま〜」
「火ィ使っているからどいとけ」
「つれない!」
「飯は?すぐ食べる?」
「そうする。サラダ持ってくよ?パンは?」
「焼いといて」
「了解」

大皿に入ったサラダと、ドレッシング。あと小皿とパンを一気に持って、リビングへ向かう。テーブルに並
べて、パンをトースターに入れた。
上着を脱いで、自分の部屋に移動。
移動中に風呂も沸かすように、スイッチを押しておいた。
明らかに行動が夫婦な自分達に、やっぱり顔がニヤニヤする。
ベッドに上着を放って、スーツのネクタイも外して放る。スーツは肩が凝るなあ、と何年も言っている文句
を、やっぱり呟いた。
ワイシャツの第一ボタンを外しながら、デスクに並べてある本の間から、雑誌を取り出す。
これこそが、俺の今回のホワイトデイだったりする。
付箋をしておいたところを開いて、中に入れておいたチケットを眺める。
高校生だった、とか。男同士、とか。そういう境界があって、あまりデートらしいデートが出来なかったか
ら。これを機会に、ちょっとお泊りでも、ね?
いや、厭らしい意味ではないんだよ、決して!……自分に言い訳とかちょっときつい?

「食べるよ、銀」
「はいよー」

雑誌を後ろに隠して、リビングに移動。
向かい合わせに座って、二人で頂きます。

「トシ〜」
「ん?」
「今日は何の日でしょう」
「ホワイトデイ」
「あたり!と、言うわけでコレね。先生からのプレゼントです。先月はありがとうございました」
「何、これ?」
「某ネズミの国の宿泊券。夢の国も海の国も両方行ける日程。……デートしよ?」

トシの目が驚きで目が点。
意外とテーマパークとか好きみたいだったから、喜んでくれると思ったんだけど…。

「うわ、ほんとに?何年ぶりだろ。ってかよくそんな金あったな!」
「社会人ですからー。で、どうするお姫様」
「姫言うな!行く。行きたい!」
「おっけ。いっぱい楽しもうね」
「おう!」

顔を見合わせて笑いあう。
全身で喜んでくれるトシが可愛くて、愛しくて、大好きだな、と思った。

「トシ、愛してるよ」
「……俺もです」






俺たちがそろえば、年がら年中甘い空気。
そんな関係が、ずっと続くといい。
絶対に続くから、でもこの空間が大切で。
それを感じた、3月14日の、とある愛の日。






END
おそくなりました〜。

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