跪いて、キスをして。永遠を請う振りをする。



迷惑な愛情表現の例。 (金土)



ネオンが煌々と光り、夜の街が顔をだす。新年ということもあってか、いつも以上に賑やかさを出す街は
妖しい光が渦巻き始めた。ここは新宿歌舞伎町。これから続々と開店していく店を横目に、金時は飄々
と街を横切っていく。ヤル気のなさそうな表情は、それでも歌舞伎町の雰囲気を察知するかのように左
右の店を観察していた。それでも、携帯を片手に歩く動作は一向に変わらず、ひっきりなしに鳴る携帯
が、新年から訪問してくれる自分の客を教えてくれる。目配せをしてくる夜の女性達も、チラリと見てくる
一般の女性も、すべてに微笑んでいると、少しはなれたところに見慣れた影を見た。
誘ってくる女をあしらいながら、煙草を蒸しているのは金時の顔なじみの刑事である土方だった。

「明けましておめでとうゴザイマス、刑事さん。これから俺と同伴でもいかが?」
「……歌舞伎町NO1は随分とヒマみてぇじゃねぇの」
「ヒマだからって俺は貴方を誘いませんよ?金さん土方にはいつでも本気〜」
「ハッ!お言葉だがホストなんてまっぴらゴメンだね。仕事中だ、さっさと消えろ」
「残念。今日、遅番でしょ?店終わったら付き合ってよ、いつものトコで待ってて?」
「いやだね」
「俺は、待ってる」

すっと土方の白く、思いのほか細い手を掴んで唇を寄せると、口付ける前に頬ごとその手でひっぱたかれ
た。軽いピリっとした衝撃が頬に走って思わず大げさに唸る。頬を撫でて、土方の方をみやると、金時の手
からのがれたソレはもうすでに彼の新しい煙草を持っていた。そのつれない様子に少々表情を崩して苦笑
いする。つれないねーと呟くと、フン、とそっぽを向かれてしまった。

「約束ね、土方」
「………勝手に言ってろ」









何人もの常連客、そして新規の客の相手をして、渋がる客にまた今度とアフターや同伴の約束をとりつける。
そうして、金時が約束の場所に着いたのは朝日が昇ろうとするころだった。
ソコにはすでに土方の姿があった。あんなに嫌がっていたのに『約束』といったら来てくれる、不器用で優しい、
そしてキレイな片思いの相手。
酒もしこたま飲み、騒ぎ、それでも肝臓も弱めず、二日酔いもないのは体質というかなんというか。夜の生活を
始めてもう長い月日がたち、いつのまにやら歌舞伎町一のホストクラブのNO1になっていた。
土方とは、数年前に新しく歌舞伎町の管轄になった彼に下っ端ホストがしょっ引かれたときに知り合った。意志
の強い瞳や、彼自身の何もかもが金時をひきつけ夢中にさせた。
そんな経験は初めてで、あれから数年、歌舞伎町一のホストとして名を馳せてもたった一人だけ落とせない。
ホスト形無しの片想い。
彼に迷惑と何度言われようが、諦めきれない男心ってね。

「お待たせしました」
「まったくだ」
「そうだなー居酒屋とバーとカフェ、どれがいい?お詫びに奢るよ」
「まだ酒呑む気か…」
「俺は土方が望むトコに行きたいな」
「………」

少しずつ朝日がのぼり始めて辺りが白くなってくる。
朝日に照らされて金時の明るい金髪がキラキラと光るのを土方は眩しそうにみやった。金時はお手をどうぞ、と
土方の目の前に差し出すが、あっけなく叩かれる。
その様子にまた苦笑い。

「好きだよ」
「信じられない」
「うん、ホストだから、でしょ?何度も聞いた」
「何度もそう言った」
「でも、俺はかなり本気だからさ。そろそろ金さん本気でいこうかな、と新年明けて決意したから」
「迷惑だ」
「迷惑な愛情表現、ってのも戦略だと思いマース」

さあ、今年も勝負の年が始まった。

「覚悟してね」
「……ほざいてろ」



跪いて、キスをして、永遠を請う振りをする。
でも、君には嘘は言わない。
きっと落とすから、覚悟して。怖くて手を出せなかった数年分、一気に無くしてみせるから。




これが俺の迷惑な愛情表現の例。





END
金→土なようで実は金→←土なんです。(わかんねーよ)

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