手を握って、方を寄せて。


 背中から抱き締めて。 (八土編)



「先生!!」
「おー、会いたかったよハニー」
「……あけましておめでとうございます」
「おめでとー、今年もよろしくね」

本日は元旦。朝10時。初詣に行こう、と昨日の夜電話で土方を誘った俺は車を駐車場に止めて神社の
階段下で彼を待っていた。パタパタと走ってきてくれた彼に軽口を飛ばすもスルー。
最近交わし方が上手くなって先生ガッカリ。
大晦日から雪がちらついていて、すこし積もった石段を登り始める。
さっきから人がたくさん行き来する石段は予想以上に危なっかしく、雪のせいで足場が悪くなってしまっ
ていた。まだ先生と生徒、ということもあって近場にデートに行けないのはネックだなあ、とつくづく思う。
有名な神社だとしても近場ならもっと有効にデートできたのにね。
隣でフラフラと階段を上る土方の手を握って、周囲に見えないように体を近づけた。
一瞬強張った手も、振り払われることなく握り返されて、なんとなく微笑が浮かぶ。

「見られるぞ」
「大丈夫だよ、ぎゅうぎゅうだもん」
「あ、そ」
「そうでーす」

手袋をしていない自分達の手は予想以上に冷たくって、もっと身体をくっつけるためにコートのポケットに
土方のてをお招き。
これにはかなり慌てたが、やっぱり抵抗もなくスンナリ。
ふと、少し下にある土方の顔をみると、目がきょろきょろしていて頬が赤かった。
微妙な照れが嬉しくて、もう一度強く手を握る。
何段もある石段を登りきると、赤い鳥居が並んでいて、それを人波に流されるようにゆっくり歩く。
ようやく見える境内にすこしほっとして、賽銭箱に入れる賽銭を用意した。

「いいご縁、だよトシ」
「15円ですね、はいはい」
「性格には115円だけど、そんなに払ったって神頼みなので15円で十分」

カラン、と音をたてて賽銭を入れる。
手を合わせて祈るのは、やっぱり君とずっと一緒にいられますように。

君と、肩を並べて歩けますように。

あと3ヶ月。実質はそんなにないけれど、こんなにも短い月日で君はあの学び舎を卒業する。
大学も推薦で決まっていて、そりゃあ俺の家からは近いけれど、また君は新しい世界をしることになる。そし
て、俺も新しいクラスを持つことになるだろう。そこで何が待つのかも分からないし、君が何を感じるかもまだ
分からない。
でもどうか、
その先の未来に、俺がいればいい。俺の未来に君は必要不可欠だから。君が、いればいい。
「せんせい」
「ん?」
「先生は何をお願いしたんですか?」
「そりゃあ、トシが俺の傍にいることだよ?トシは?」
「おれ、は」

合わせた手を解いて、賽銭箱の前から離れると今度は土方の方から手を繋いでくれた。
いや、すんげえ幸せなんですけど!!

「ずっと先生と歩いていけますように、って…うわ!!」

いい終わるや否や抱き締めた。
やばいわ、マジで好きだわ。同じことを思っていてくれるのはなんて幸せなことなんだろうね。
新年からこんな幸せで、俺この先どうしよう。卒業とか、目の癒しが無くなっちゃうし。

「お昼食べて、映画見て、おれんち行こうか」
「はい」

手を繋いで、歩き出す。ゆっくりゆっくり石段を降りて、人の波から土方を守って。

「先生」

「あ、車あっちな。駐車場に置いてあるから」「先生、俺ちゃんと持ってますよ!」
「何を?」
「かぎ」

多分土方の家の鍵だろうものの束の中から一本、見覚えのある鍵。クリスマスに渡した俺のうちの鍵。
それを見せながらふんわりと笑って、

「だから、卒業したって、何したって俺は絶対離れませんから」

覚悟していてください、

そう呟いてサクサク駐車場へ歩いていってしまう土方を横目に、俺は一歩も動けなかった。
だんだん火照ってくる体は、集中的に顔を赤くして、地面に足をしばりつけた。
もう、ほんとに。

「かなわねー」



坂田銀時、新年早々分かったことが1つ。
おれの年下の恋人は、あんがい子供でもなんでもなく相当なツワモノでした。








END
トシがトシじゃない!!!



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