漢、坂田銀時、勝負します。


溢れるくらい、君が好き。 《前》 (クリスマス銀土編その1)




町はお祭り騒ぎ。もちろん、パチンコの店員もサンタの格好をしていたし、ツリーだって飾ってあるし、白
と赤と緑のオンパレード。家のガキ共も浮かれて今日はお妙んところでパーティらしい。
俺はというと、そのパーティに招かれていてパチンコ帰りにフラフラと寄っていこうと原付を走らせている。
片手運転でハンドルを持っていないほうの手には戦利品の煙草とかお菓子とか。
ぶっちゃけ煙草とかいらないんだよね。昔は吸ってたけど、禁煙で甘いもの食べてからはすっかりこっち
になっちゃったし。
煙草、っていうとアイツを思い出す。瞳孔開き気味でいつも怒ったような表情をしていて、ヘビースモーカ
ーでマヨネーズが大好きで、仲間思いで変なところで生真面目で笑うとかなり可愛い、たった一回の斬
りあいで俺を虜にした、真撰組鬼の副長、土方十四郎。
もうすぐ30になる俺ですが、かなり本気で惚れている模様です。
男だからとか、関係なくてって言うか俺はどっちでも平気だからそんなんはどうでもいいし。心が動くかど
うかだと思うわけですよ。でも、向こうはどうなんだろうね。ノンケなんかな……自分で迫ってったこととか
あんまり無い気がするな。本気になったことって無い気がするし…。うおーそれってどうよ!
右にまがり、左に曲がりを繰り返して志村家の道場が見えてくる。
もう日も暮れ始めている夕方、夕日にあたる志村道場の門下に黒い数人の人影。
ブレーキを握って勢い良く目の前で止まってやる。
………やっぱり、

「多串くんじゃん」
「土方だ!!だれだ多串って。お前の脳内にいる人か。まさか電波かお前!」
「電波とか差別だとおもうわけよ、電波も電波なりに電波を尊重しながらひっそりいきてんだよ!でも俺
は違う!!断じて電波ではないだってメイドよりナースがいいもん」
「尊重してんのにひっそりとか、矛盾してるし。メイドもナースも電波だよ。同じだよ。日本語も弱いのか、
大変だなその鳥頭も、ふさふさしてるだけで中身はパーか?」
「髪型か?!テンパの事をいってんのかコノヤロー。お前がさらさらキラキラストレートだからって!」
「あぁ?ンな事言ってねえよ、やんのかコラ上等だ!!」
「あぁ、止めてください副長……!!」

刀を取り出し始めた土方をやま……なんだっけ?とりあえずジミー君が止める。止めたところを思い切り
返り討ちにされていた。ご愁傷様…。ふとよく周りを見ると、土方の他にジミー君、ゴリラ、S王子が居
た。顔ぶれそろって、俺と同じ御呼ばれってところだろう。ゴリラが招かれるなんて珍しい。

「よう、銀時!お前もお妙さんに呼ばれたのか」
「まーな」
「どうも旦那。今日もいい感じにやる気無いですねぃ」
「おまえはいい感じに性格悪そうだぞ」
「こんにちは、旦那」
「よう、やま……だ君?」
「………山崎です」

山崎ね、山崎。なんか全国多い苗字ベスト10に載ってそうな苗字だね。多分すぐ忘れちまうなあ、ゴメ
ンネ、ジミー君。さっきジミー君を血祭りに上げていた土方をチラリと見るとぼーっと空を仰いでいた。仕
事帰りなのか隊服から除く肌がいやに白いし血管浮いているんじゃね?少し吹いた風に攫われる髪が
かなりサラサラで触ったらきもちよさそうだなあ。あ、半開きの口がエロ……

「黙れ銀髪!!」
「口に出てた?」
「そう言うのは無表情に脳内で言わなければプロになれませんぜぃ、旦那」
「無表情はクリアだと思うんだけどな」
「目が怪しいんだよ!……だぁぁあ!もう、ほら近藤さん、さっさと中に入るぞ」

顔を真っ赤にして中に入っていく土方はめちゃくちゃ可愛いのだけれど、近藤の背中を押していくのはど
うかと思うよ、俺。胸んなかが何かムズムズするし。
来客者に気がついたのか新八がパタパタと走ってきた。ゆっくりと神楽と妙もやってきている。これが彼
と彼女らの人への気の使い具合の違いだと思うのは俺だけか?いや、俺も気なんかつかわねえけど。
原付を門を入ったところに止めて先に玄関へ着いていた真撰組ご一行に追いつく。すると、新八と神楽が
近寄って耳を貸せと手招きをしてきた。

「銀さん」
「ん?」
「頑張ってくださいね」
「銀ちゃんへのアタシ達からのプレゼントアル。このチャンスを盛大に生かしてトシちゃん物にするヨロシ」
「………いい子に育ったな、お前ら……!!!」

いい子供をもったな、俺。と涙を拭きつつパチンコの戦利品の飴を一個ずつ手渡すとショボイと非難が飛び
交ったが、そんなのはスルーってことで。
近藤は玄関先で妙に飛びつき撃沈。それを拾うジミー君に傍観者な沖田。その様子に怒りながらも妙に
謝罪をいれる土方の姿が見える。
今回のパーティは俺へのプレゼントらしい。活用しない手はないとは思う。思うんだけれど、告白って
か?それはちょっと早いんじゃない?!ってか相手、たぶんノンケなんですけど!!

「あぁ、そうだ。志村姉、コレ俺からの差し入れだ。今回の礼ってことであとで食ってくれ」
「まあ、スミマセンわざわざ!ケーキですか?美味しそう」
「トシの手作りなんですよ」
「「「………えぇぇ!!」」」

ゴリラから発せられた衝撃の事実。俺と新八、神楽の三重奏で妙は多少びっくりした顔をしたものの、す
ぐに立ち直り台所に置いてくるとパタパタと駆けていった。むしろ、美人で仕事も出来て、料理上手とか、
どんな完璧人間だよ。それで女も男も虜にしちゃうとか、どうなわけ?!めちゃ高嶺の花じゃねえか!!
俺はあれか、学園のアイドルに恋をする不良か?!天と地の差だな、おい。
ポン、と両脇から方を叩かれる。それはやっぱり俺と同じことを思った、ってことだろうな。うん。

でもさ、

ちょっと数分一緒の空気吸っていただけでかなり動悸とまんねえ。
やっぱり好きだわ、俺。コイツのこと。
だって、さっきから煙草を吸わないのは新八とか神楽とか子供がいるからだろ?
小さな気遣いとか、そう言うのが出来るってのがまず俺としては人間としてすげえし、ぐっとくる。
好きだ好きだーって光線送っても気づいてくれないのは苦しい、でもどっかで安心してる。
まだ、見続けていいんだって。
まだ、この位置は変わっていないんだって。

「おおぐしくん」
「だから土方だって言ってんだろ!!」
「今年1年頑張った多串くんには優しい優しい銀さんからコレをあげよう」
「はぁ?」

不思議な顔をしている土方にパチンコの紙袋から煙草を取り出す。
パチンコ屋の店員が煙草を選ばせてくれて、その中で目に付いたのがコレ、

「俺の銘柄?」
「そ。………たまたま、ソレ当たったからおめぇにやるよ」

嘘だけど。意図的に持ってきたけど。
そんな発言をした俺に目をまん丸にしたあと、ふっと笑って、煙草を受け取った。

「……サンキュ。ま、安っぽいけど貰っといてやるよ」
「安っぽいは余計だ!」
「じゃあ、俺からはコレをやる」

ポン、と手のひらに渡されたのは小さな包みに入ったカップケーキ。
見るからに手作り。

「ケーキのついでだよ、ついで」
「………旨いことを祈ってるぜ」
「上等だコラ。涙流して旨いと言え!!」

そう言いながらクスクスと笑う姿を、初めて見て煙草をあげてよかったと心底思った。思ったと同時に、甘
く疼きだすのは理不尽な俺の心。

『頑張って』

そう、言われた。
俺は、その好意に甘えるべきだろうか?玉砕覚悟で?そんな覚悟なんて無いのに?
でも、
それでも、
俺はアイツが好きだから。
漢、銀時。勝負に出ます!!!








NEXT>>25日


無意識にラブラブ。完結編は明日!!



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