こんなに、緊張したことはない。


抑えきれない熱情を。 (クリスマス八土編)



「おじゃまします」
「はい、いらっしゃ〜い」

本日は12月24日、クリスマスイブ。サンタさんがそりに乗ってプレゼントを配りに来る前日。
あと数ヶ月たって季節が変わったら付き合って1年になる俺の恋人、土方十四郎くんが今日から明日まで
お泊りデート。現在高校3年生。受験も難なく無事合格。実家から通うにはちょっとお金のかかる、でも俺
のうちからそれなりに近い有名大学を軽く合格し、あとは気ままな学生を楽しんでいる。
そんな彼と俺はさっきまでショッピングを楽しんでいたわけで。今夜はトシが料理をしてくれるらしく、大量
の食材と、ケーキを買い込んで帰ってきた。
彼はというと、速攻で料理の準備を始めている。俺も一人暮らしが長いから、それなりに家事もできるけれ
ど、何故か年下の彼にはまったく歯が立たない。鼻歌を口ずさみながらテンポ良く料理をしていく後姿に
微笑みかけながら自室へと向かう。
ちなみに、俺の家はボロイ5階建てのマンション。エレベーターなし、2LDKで家賃は格安。一人暮らしを
始めて、それなりに金が溜まったころに買ったマンションだからそうとう長く住んでいると思う。朝、久しぶ
りにトシが家へ来るということで足の踏み場もない各部屋を根性で掃除をしたから、結構広く感じられる。
自室は、ベッドとタンスとか、あとクローゼットくらいしかない。もうひとつ、自室よりも広い部屋は俺の仕事
部屋として使っているため、コチラには最低限のものしか置いていない。
タンスの一番上の引き出しをあけて、小さなラッピングされた小箱をとりだす。

………用意したものの、どうやって渡そうか。
むしろ、こんなもの用意したの初めてなんだけど。
昔の俺って広く浅く短くって感じだったから。酷いって?うん、自分でもそう思う。
女々しい?俺ってかなり女々しい?いや、でも愛しいハニーのことを考えたらこうならざるを得ないというか、
こうなるのが必然的っていうか。え、やっぱ女々しくない?

「銀時?」
「ぬお!!!」

思わず肩が揺れて小箱を落としそうになる。ばれないようにそおっと、着ているパーカーのポケットに忍ば
せてゆっくり振り返ると、不思議顔の恋人がいた。

「何してんだ?」
「……いや、我ながら頑張って片付けたなあ、今夜が楽しみだなぁ…っておもっ」
「いわなくていいですから!!」
「んで?トシはどうしたの?」
「……あぁ、もうすぐ出来るから手伝え、って言いに」
「マジ?もうそんな時間?」

まじです。と答えながらまた台所へと引っ込むトシを見送って安堵の溜息。
ばれる訳にはいかないんです。やっぱり、驚かせたいじゃない?男心としては。そんなに大それたものじ
ゃないし、喜んでくれるか分からないけれど、そろそろだと思うわけよ、大人の男として。もうすぐ1年にな
るんだよ?コレくらい渡してもいいと思うんだよね。

「ぎん〜?」
「ん〜、今行きます」




「ごちそうさま。すっげえ、まじで旨かった」
「おそまつさま。喜んでくれて光栄です」
「いつでもお嫁においで?」
「………考えておいてやる」
「……………………………まじ?」

凄く美味しい飯にもありつけ、かなり大満足。しかも軽く言った本気なプロポーズを、怒鳴るわけでもなくち
ょっと俯き加減で答えたトシに目はまん丸になったものの、だんだん顔が熱くなってくる。
バカップルだよ!!馬鹿なカップルだよ!あたりまえだろ、付き合いだした当初の目標はバカップルだっ
たんだから!!まだまだ発展途上だけどね。

いつ、渡そうか。

ポケットに入った小さな小箱。
でも、俺の夢とか希望とか愛情とかなんかいろいろ詰まってる小箱。
喜んでくれる?それとも呆れられる?
びっくりして、声もでないかな。
てゆーか、受け取ってくれるのかな。拒まれたらどうしよう。ああ、女々しい俺。
うわ、本当に心臓ドキドキしてきた。やばいかも。何歳だよ、あ、まだ30にはなってないけどさ。

「なあ、トシ?」
「ん?」

絶対声上ずった…!

「あの、さ」

落ち着け、俺。

「俺からの、プレゼントなんだけど」

今、焦りすぎて噛んだかも。

「受け取って、くれる?」

ポケットから小箱をとりだしてトシの前にちょこんと置く。
びっくりして目を丸にしているトシに、開けてみて?と促すと、ラッピングを丁寧に丁寧に剥がしていく。
壊れ物を扱うようにゆっくり開けるトシが可愛くて、やっぱり好きだなと改めておもう。

「せんせい、……コレ」
「うん。指輪も考えたんだけどまずはこっちかなって思って」

俺が用意したのは俺の家の鍵。指輪だと思った人、手ェあげて!!俺もさ、考えたんだよね指輪。でもも
うちょっと経ってから。まずは俺の家で君がお帰り、とかそう言うことを言ってくれるようになることを選んで
みたんだ。物には順序、とかそう言うのは気にしないたちだったんだけど。どうも、この年下の恋人には純
情になってしまう20代後半…。

「俺ん家で、『おかえり』とか『ただいま』とか言ってください」

「ありがと、銀。すっげえ嬉しい……!」

ふわり、微笑んだ姿がかわいくて、机越しに抱き締めた。
好き。好きだよ。本当に。
ぎゅっと強く抱き締めると首に腕をまわしてくれる。この動作は告白したときと全然変わらない。



「来年も、よろしくね?」






今この瞬間、クリスマスっていう俺としては恋人同士のイベントに一緒にいることが、最高の幸せ。
来年も、よろしくお願いいたします。











END
アンケート第1位八土でいちゃいちゃでした。
ちなみに銀八はあだ名です(いらんそんな説明)本名は坂田銀時ですよ!
指輪だと思った人、手上げて!!(勘違いした人がいたら私の勝ちです)(どんな)




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