君を強く抱き締めて。




君を想う、そのたびに。





本日晴天。天然パーマに優しくない梅雨も開け、夏に入る少し手前。爽やかな風が開け放った窓からそよいできて
、なんとも気持ちがいい。神楽は新八の家へ遊びに出かけ、今日はそっちへ泊まるという。トシはといえば、現在奇跡的
にも隣に居て、今日と明日の2日間は有り余った有給を取得。俺の傍に居てくれる、筈なのに……。

世の中はそんなに甘くないって…!!知ってたけどね!!

可愛い恋人・土方十四郎君は現在、玄関で隊士の皆様などなどお客様接待中。鳴り止まない呼び鈴。絶えない訪問者。代わる
代わるやってくるその内容はといえば、さして重大でもない些細なこと。
きっと真撰組のやつらは有給2日でトシが何所へ行くか、どう過ごすかなんて分かっていて邪魔をしてくるのだ。白々しく
なにが「副長探しましたー」なのか。
トシが、いくら目つきが悪く口が悪く、果ては『鬼の副長』などと恐れられていたとしても、人望は局長である近藤に負けず劣らず厚い。
ある意味での『真撰組のアイドル』、『目に入れても痛くない愛娘』。奴らは絶対『可愛い子ほど箱に入れて育て隊』に決まっている。
いっその事改名しろよ、くそったれ。可愛い子に旅なんて言語道断。箱入り息子で何が悪い!!そんな勢い。
当の本人は、まったく其のことに気がつきもしない鈍い人なんだけど。


「……そうそう。その机の、上から2番……あぁ?ちげぇよ!何聞いてたんだよお前!」
「………」


今のは何だったっけ…?あぁ、書類何所ですか、だ。電話にしろよ。自分でさがせよ。まあ、コレは結構まともな方。
ちょっと前のやつは確か「山崎のミントンが止まりません」だ。ああ、あとは「沖田隊長が暴走を!!」とか言うのもあったな。
これには十中八九オレんトコの怪力娘が絡んでいると思うね。なんだかそれっぽい事を今朝言っていたから。
現在の時刻、2時30分。土方の手料理で昼飯食って、よしイチャイチャしようと思っていたら呼び鈴が鳴り始めること約2時間半。

………すねちゃおうかなー。

拗ねたって罰は当たんないと思うよ、俺。そりゃあ、悪いのはこいつじゃないけどね。
とりあえず、ソファーに寝転がって足元に放り投げたジャンプを足で引き寄せた。適当なページを開いて顔に乗せる。
結構重いけれどそんなことはいつもの事だ。結構この重圧がいい睡魔を誘うのですよ、奥さん。
パタン、と玄関の閉まる音がしたけれど気にしない。だって俺は拗ねている。俺は寝ている。……不貞寝だけど。


「銀?」
「………」
「銀時?」
「……………………」


ソファーの傍に彼の気配がして、かなりドキドキするうえに夏風にのっていい匂いまで…。……ん?俺変態?
近くに立っているのが分った。多分放っておいた事にちょっと負い目とか感じているのだと思う。人の気持ちに敏感な子だしね。
そして滅茶苦茶、優しい子だから、皆にモテモテ。女にも男にも。この前なんてズラやらなにやらテロリスト共が「捕まるなら土方
がいい」とか言っていた。アホだ。絶対アホだ。其の前にトシの仕事増やさないでくださいよ。ただでさえ最近会ってなくて、
夜の営みもかなりご無沙汰なのですよ。


「………」
「………………」
「………ぎんと…」


ピンポーン。   ガバ!!!


「また!?また邪魔が!?」
「……お前起きてたんかッ!!」
「いや、ちょっと不貞寝を。」


俺が出て行って半ギレすればもしかしたらちょっと減るかもしれないとか思って、トシと競い合うように玄関に雪崩れ込む。生憎、
やはり人生そうは上手くいかないらしく、先に玄関に着いたのはトシだった。
思い切りドアを開けると、先ほどの話題の人物、沖田総悟くん。ちょっと傷だらけなのはうちの子の攻撃でしょうか?ごめんね。


「………?総悟?どうした?」
「いえ、ちょっと邪魔しに」
「……少しくらい悪意を隠そうとしろよ、お前!!」
「無理でさあ」


怒鳴りつける俺と、のうのうと毒を吐く青年に痛恨のチョップ。いや、マジで痛いのですが。もうさぁー……涙出てくるよ、そろそろ。
なんだかもう、怒鳴る気力もなく、ただ自分の嫉妬って言う心の狭さに落胆。
もういいさー、マジで寝てやる。そう思って、ダラダラと室内へ足を延ばした。


「ぎん?」
「………やりすぎたか」
「総悟……?」
「ま、俺はこれでお暇しやすんで、あとはお二人でごゆっくりー」
「……なにがしたかったんだ、お前」
「友情出演、ってやつでさあ」


パタパタと、俺を追っかけてくる足音が聞こえて、あー終わったのだ、とか思った瞬間に後ろから羽交い絞めにされた。……痛い。
トシくん、俺はね。今、猛烈に自分の嫉妬とか君の優しさとかに憎しみを感じているので、嵐が去るまでは放っておいて欲しいな。


「銀。言ってくれなきゃ俺は分からねえぞ」
「知ってる」
「…じゃあ言え。すぐ言え。はやく吐け」


言ったら、トシ絶対に呆れるじゃん。でも、言わないと泣くよね、絶対泣くよね。涙腺弱いもんね。
仕方ないから、羽交い絞めにしている腕を解いて正面から抱き締める。
あー……トシだぁ。トシだぁ。いい匂いー。コレだけで結構気持ちが和む俺は、かなり現金。


「醜いオトコの嫉妬ですよ、奥さん」
「だれが奥さんだ」
「……突っ込み所はそこなの?…まあ良いや。折角の休みに恋人はモテモテで俺ほったらかし。銀さん寂しかったの」
「………」


ぎゅっと、強く抱き締めると、背中に回された腕に力が篭って、抱き締め返された。なんだか、触れ合っているという事実がいや
に嬉しくて、今までの寂しさとか、苛立ちとかがどんどん引いていくのが分かる。
触れ合った、コイツはとても暖かくて、安心した。犬のように、肩口に額を擦り付けると、ポンポン、と頭を撫でられた。
あー……愛されてるなあ。


「ごめん」
「んー」
「ごめん、な?」
「トシ、俺のこと好き?アイシテル??」


恥ずかしがりやの君に、俺は無謀なこと聞いているのかもしれないけれど。
それでも、それでも無性に不安になるときとか、苛立つときだってあるから。そんなときは、口に出して。


「……る」
「??」
「愛してる。大好き」
「…………っ」


本当に言葉に出されるとは思わなくて、軽く流されるだけかと思っていた。
ふいに言われた―いや言わせた、の方が正しいのかもしれないけれど―言葉は告白したときとか、初めて身体を重ねたとき並
に心の中に染みてきて、なんだか顔が熱くなった。


「トシー」
「ん?」
「俺も大好き、超アイシテル」
「ん、知ってる」






他愛も無い、こんな会話で幸福。
君を思う、其のたびに。
俺は色々なものを感じて、いろいろなものを教わるんだ。
やっぱり、まだまだ嫉妬とか喧嘩とか尽きないのだろうけれど。
尽きない分だけ、愛し合えると思うから。
だから、


これからもヨロシクね?



君を強く抱き締めて、そう思ったある日の昼下がり。










END
読みきりを久々に書きました…(汗)「モテモテトシに嫉妬な銀ちゃん」ということで。
キリバン、31313を踏んでくださった彩様!ご期待に添えられたかどうか分かりませんが、こんなんになりました…。
遅くなってスミマセン!!返品可です……。
もう、ヘボヘボでごめんなさいぃ……これほどまでに文才がないというのも考えものな気がしますね…(泣)
それでは、本当にリクありがとうございました!よろしければ、またお会いできる日を楽しみにしておりますvv





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