座り込む、思いのほか小さな後姿を抱き締めて。




09: 震える手が伸ばされた





こんな都会のどこにこんな敷地をかくしていたんだって程何故だか広い公園を駆けずり回って一周近くを走り回ると、
先ほど逃げられた後姿が座り込んでいた。
立ち止まって、格好悪く乱れた息を深呼吸で無理やり抑えた。

ゆっくり近づいても、普段気配に敏感なアイツは気がつかなくてなんだか悪いことをした気がしたけれど、固く決めた決意
は揺るがない。妙な緊張感がゆえに、足音も立てずに近づいてドラマよろしく、


抱き締めた。


こわばる身体に、濡れているタイルに、少しの期待を抱いてしまう自分が女々しすぎて笑ってしまう。


「好きだよ、っていったじゃん」


「俺は、返事を聞くまで絶対にお前を逃がさないから」


「20代後半のせんせーの淡い恋、軽蔑しないで?」


おふざけ半分。というか、0・5位ふざけて言ってみる。
更に強張る身体が、とても愛しくて更に強く抱き締めた。抱き寄せて、震え始める手を強く握ってごまかす。
零れる嗚咽が、なんだか切なくて、こっちまで涙がこみ上げてきた。でも、我慢する限度は、きっともう超えてしまっているん<だ。


軽蔑しないで、なんて実際かなり本心なんだ。
触れた身体越しから、この動悸が聞こえればいいのに。
3年越しの片思いで、馬鹿なくらい真剣なんだよ。たくさんのハードルがある恋だけれど、めちゃくちゃ真剣なんだ。ねえ、


ねえ、


ひじかた。


「好き。お前って言う存在が、本当に好きだよ」


「…………っ!」



ビクン、と背中がはねて、終わったなあ、とか頭のはじっこで他人事のように感じた。


「やっぱ。無理だよね〜」


うん、ごめんね。
いつもの調子で、俺は笑っている?結構必死なんだけど。



「…………です」
「え?」





「俺も、先生が好きです。3年間、ずっと」





この子はいったい今、なにを言った?
「すき」?
おいおいおい。ポツリ、と呟かれた言葉が、かなり大事で、想いが篭った言葉だったから、じんわりと心に落ちてくる。
嬉しすぎて、赤くなる顔を隠すように更に抱き締める腕に力を込めた。


「さっきはビビって逃げちまったけど……」


強く抱き締める腕を解いて、くるりと身体を反転させた。
意志の強い、漆黒の目がじっと見つめてきて濡れている目元が切なかった。
ふいに、
首に腕を回されて、強い力で抱き締められた。
抱き締めてきたぶんの力で、それ以上の想いで、



「すきです」








遠回りしすぎた分、つたられた言葉は胸を締め付けられる一言だった。


やっと手に入れた愛しい人にキスをして、


何度も何度も抱き締めた。


抱き締めたら、抱き締められて。


お互い、震えていた手を伸ばして、手を繋いで。


愛しい、ってそう、思った。












END
あーこっぱずかしい!!!









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