俺ってラッキー、とか某マンガを真似てみたりして。




07:逃げる君と、追う権利をもたない僕




車のエンジンを蒸してそうそうと学校を出てから、土方の最寄駅のある方角へ右折するとすぐさま赤信号になってしまった。
あちゃー、とか内心焦りつつ、片手でカバンの中の煙草を探す。なかなか見つからなくて、前方から視線を外した。
ガサゴソとカバンの中を引っ掻き回すと、しょぼい10円ライターと10本入りのマッチ。それから、愛用の煙草が見つかって少しほ
っとする。一本とりだして火をつけようとして、前を向くとまだ赤信号でドレくらい長いのだ、とか悪態をついた。
ふと、バックミラーに見知った影をみつけ、そちらもコチラに気がついたようだ。


近藤勲。


脳内はお馬鹿ちゃんだが人望はあり、髭を生やしていて高校生に見えないが笑うと年相応。でもゴリラ。同じクラスの志村妙のスト
ーカーで、我が学校の生徒会長。そのうえ剣道部部長の、道場の息子。
お隣のうちが土方家(右)。沖田家(左)。だそうで、もちろんこの3人は幼馴染だ。病院に幼稚園、小学校から高校まで一緒とか、
近藤から聞いたときかなりありえねえと思った。親同士も結構仲良いんだと。
まだまだ続く赤信号の中、助手席のガラスをコンコン、と叩かれた。仕方がないので下げてやると、満面の笑みで返された。


「あー、トシ、公園の中にいるんで話つけてこいや」

……こいつもか。こいつも知っているのか!!!


「俺と総悟くらいしか知らねえから、安心しろって銀八」


……このマブダチトリオはエスパーか。


「顔がそういってるだけだって。トシは気づかないからマブダチ‘sだな」
「先生は人の心を読むような子に3年間育てたわけじゃありません」
「まともな教育してねえでしょうが……」


呆れ顔で苦笑いされた。どっちが年上かわかんねえな。いや、俺なんだけど。でも、俺はまだまだピチピチよ?言っとくけど。
大学でてから3年くらいしか立ってないよ?……今、歳ばらした?もしかして。
赤信号がようやく青に変わろうとしているので、近藤に「サンキュウ」と別れを告げると、「よろしく頼みます」返された。
手で挨拶して、公園の入り口付近に路駐。ここら辺は交通課もあんまり来ない穴場なので、全然OK大丈夫。
車から降りて、鍵をかけると街頭付近のベンチに座って空を見る土方が見えた。


俺ってラッキー。


目標はまだ俺には気がついていない。
早まる動悸と白くなりそうな頭の中を叱咤して、大きく深呼吸をした。深呼吸をしたところで俺の身体状況は変わりはしなかった
が、ここはアレだ。心の問題だ!!メンタルケアだ!!
ちなみに振られる確率100%くらいだから、このあとのメンタルケアが大変だと思うね。
ゆっくり近づいて立ち止まると、目標が俺に気がついた。……あああああ、どうしよう!!


「……せんせい」


驚いたような声をかけられて、なんだかマジでふっとぶ5秒前?ああ、本当にごめん。
なんだか今日は心の中で謝ってばっかりだけど、謝らずにはいられない。




「土方さ、一目ぼれって信じる?」


「3年前の入学式でさ、俺まさにソレをしましてね」


「ソレ、お前だったりするの」


「一目ぼれってやつなんです」



「俺もお前も男だけど、そう言うの関係なしに、お前が好きなの」


「だからさっき、理性ブチ切れちゃった。……本当にごめんね」


「本当、ごめん」


「でも、真面目に、返事してくれると嬉しい」



あー、言っちゃったよ。俺かなり今泣きそう。一方的に言って、一方的に終わった会話に、俺はそう思った。
だって、
だってさ、良い告白文句なんて思い浮かばない。焦っちゃってシドロモドロ。気の利いた言葉ひとつ言えやしない。
信憑性あるような言葉とか、クサイ愛の台詞とか、なんにも浮かばないくらい頭真っ白だから、目だけで伝えちゃいます



俺、真剣だから。



目を見てくれれば、伝わるかな。伝わって欲しいな。



ふっと、笑って見せると、かなり自分が情けない笑顔なのかが手に取るように分かった。
土方が、かなり驚愕しているのも手に取るように分かった。そりゃそうだよね。男からマジ告白だもんね。普通はビビるよね。
5メートルくらい離れている土方まで、少しずつ近づこうと思って一歩踏み出すと、相手は一歩退がった。
一歩進むと、退がる。
一歩進むと、退がる。
……一歩進むと、退がる。
これは、遊びか?もしくは拒絶か?!後者はとても嫌なんだが。そういや、「退」って名前の教え子いたなあ。
あいつも剣道部だっけ?ミントンばっかりやってるのにね。
ああ、やっていることと思っていることがグチャグチャだ。


「ねえ、土方」


「返事、くれない?」


目にありったけの力を込めて、彼を見た。
暗がりにかくれて、その表情はなかなか読み取れないけれど雰囲気はさっきから変わらず驚嘆したまま。
ああ、どうしよう。
どうしよう。
本当に振られるかも。むしろ淡い期待を心の奥で持っている自分の愚かさに拍手喝采だ。手が、じっとり汗ばんできて今更ぎゅっと、
力強く掌をにぎっていたことを知った。
俺もたいがい余裕がないなぁ。



「………ッ!!」





途端、ダッ!とばかりに土方が爆走。
え?マジですか。逃げられた?



どうする?



追う?



追って、いいのかな。



俺が嫌だから逃げたのかもしれないじゃん。追いかけて余計嫌な思いさせたらなんだか切なくない?
俺、一応さ。大人なんだよ。引き際って肝心じゃない?
そう思うのに、身体が動かない。走り出している。




ごめん


ごめんね。


ほら、俺って「決めた後と理性ふっとんだ後が早い」から。
追う権利とか俺にはまったく無くて、無理やり返事聞く権利もないんだけどね。




でも、




本能のまま、お前とは接したいって思うから。




追わせていただきます。




覚悟しとけ。
















END
青臭いな。へタレだな。












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