この年で、純愛とか本当に笑えるけど。




06:踏み込めない、踏み込んでいい?





「失礼しました」と、律儀に教員室のドアの前で挨拶をして教え子が出て行った。彼に気づかれているとは思わなくて、なおかつ
激励されるとも思わなかった。それほど自分自身、嫌われてるなあ、という自覚はあったし。
まあ、彼は幼馴染である土方が大好きでたまらないみたいだったから、当然といえば当然だったのかもしれない。




俺は、本当に沖田の言うように動いてしまっていいのだろうか。



年齢も、離れている。
立場も全然違う。
俺が動くことで、アイツに負担がかかってしまうかもしれない。



「それは、嫌だな」




選択肢は、最初から1つしかなかった。



見つめるだけで、この気持ちを押し殺して彼の成長を見届ける。



けれど、その選択肢を選んだところでどうなった?見ているだけで良いなんていう状態はとっくの昔に越していたのだ。人は、むし
ろ俺は、日々欲張りになっていくものだから。だから想いが暴走した。暴走したせいで見届けるという選択肢が、「もう関わらな
い」に変わった。でも、その一方で「あたって砕けろ」という選択肢が増えた。
でも、だからと言って。
そうやすやすと「あたって砕けろ」なんて。いい大人が?出来るはずがないんだよ、沖田君。



けど、



心のどこかでまだ、願っているんだ。
俺のことを好きになってくれないかな、っていうこと。
だって好きなんだよ。本当に。この年になってこんな想いするとは思わなくて、自分自身びっくりだけどね。
踏み込んでしまって良いのだろうか。彼はとてもとても優しいから、きっと俺のことを振ったとしても同じように接してくれるだろう。
勿論、俺の努力も必要だけれど。



あぁーーーっ!!!



うだうだ悩んじゃって結構俺、うざくない?
うん、ウザいよね。分かってる、分かってる。



冷め切ったコーヒーを一口飲むと、インスタントのせいかかなり不味かった。でも、緊張と不安となんだかさっきからごちゃごちゃで
ウザい思考回路はちょっとだけ落ち着いて、ふう、と溜息がこぼれた。
ぼんやりと汚いクリーム色の天井と蛍光灯の光を見つめる。




ホント。ここまで勇気がないのもどうかと思う。
いっそさ、本当にあたって砕けてしまおうか。




君が俺のことを好きになっているはずは蟻んこほどもなくて、ちょっとした俺の中の淡い期待はただの妄想。
これで、なんのアクションも起こさなかったら本当に沖田に刺されそうだしね。
うん、もう一度自己確認。



土方が好きですか?
すげえ好きです。


勇気は、ありますか?
全然ないです。


覚悟は?
これもないです。


自信は?
ある、はずがない。



でもね。




本当に、好きだから。
男女とか関係なく。アイツを好きになった時も、全然悩まなかったしね。


言うだけ、言ってしまおうか。
だって抱き締めてしまったし。俺の記憶にあのぬくもりはちゃんと焼きついてしまったし。




「よし!!」



パンパン!と頬を平手で強く叩いて勢い良く立ち上がる。
腕時計を確認すると6時半ごろ。土方やら沖田やらの一悶着があったのは6時ちょい前。
急いでカバンに今日、自宅に持って帰るべき書類とかを詰め込んで、鍵の束をひったくった。急げば、もしかしたら間に合うかもし
れない。いや、間に合わなかったら自宅までお伺いさせていただきます!!




ごめんね。



ごめんね、土方。



先生さ、決意しちゃったり理性切れたら行動早いんだよね。



今から年甲斐もなく頑張っちゃうから、覚悟しておいてね。





だから、




引いたり、ビビッたりしないで、



真面目に受け止めてお返事してくれれば幸いです。





踏み込めない?
踏み込んでいい?



そんなの俺にはわからないけれど、
踏み込ませて、頂きます。


















END

絡みが書きたい。






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送