こんな男の、何所がいいのか。





05:あの日見つけたあの表情





近藤さんに言われ体育館と部室と道場の鍵を返しに教員室へ訪れると、この世の終わりのような雰囲気をかもし出す我らが担
任、坂田銀時が机につっぷしていた。


なんて迷惑なのだろう。



3年間、担任をしてくれたこの男は3年間必死に俺の大事な大事な大事な可愛くて綺麗でカッコいい幼馴染に想いを寄せてい
る。彼に想いを寄せていると気づいた時点で俺のブラックリストのトップに名が躍り出て、なおかつ大嫌いリストのトップに立った。
そのうえ、もっと気に入らないのはコイツへ無意識ながらも俺の幼馴染である土方さんが恋心を抱いているのに気がついたことだ。

つまりは、相思相愛。

両想いってやつ。



こんな男のどこがいい。


授業は真面目にやらない(俺も聞く気は無い)。

煙草は吸う(土方さんもすってるけど)。

やる気が無い(俺もない)。

ルックスは良いほうだがなんだか嫌だ(てか俺のほうがいい)。



良いところなんてないじゃないか。

こんな男の何所がいい。

願わくば、この男の想いも、彼の想いも、年月と卒業によって風化してくれないかと何度願ったことだろう。そりゃあ、醜い嫉妬だ
って言うのは十分承知している。あたりまえだ。生まれた病院でさえ一緒の18年間一緒に居た彼をひょっこり現れたマダオに何
故に奪われなければならない。
俺が認めるのはきちんとした女か男なら近藤さんだけだ。
ここで追い討ちを掛けてざっくり殺るか?きっと土方さんに手でも出して玉砕でもしたんだろう。
いっそのこと一思いにやってしまおうか。そのほうが今後のためだと思う。



だけど。



「銀八」




そんなことしたら。




「うぜぇですぜぃ」




あの人が悲しむと思うわけだ。あの人思いの俺としては。



あ、こっち向いた。ひでえ顔していやがりますね。後悔とか懺悔とかなんだか暗い感情が渋面になって表れている。はっきり言っ
て不細工だな。悔しいが、元がいいのだから尚更ヤバく見えてしまう。




「なんでぃ、この雰囲気。どーせあの人に我慢できずに手でもだして突き放されて、ああどうしよう。ってことだろぃ?」




目ぇ、見開くなよ。

わかんねぇとでも思ったか馬鹿教師が。
二人してあんなに優しい目でお互いのこと見やがって。気がついたのはほんの偶然でほんの一瞬の出来事だったけれど、あん
なにも優しい目と表情と仕草で。あんなにも無意識に愛情表現しやがって。

悔しいことこの上ない。



「いい加減、やせ我慢はよしたらどうですかぃ。見苦しいですぜ、銀八。当たって砕けて見やがれ」

「俺のこと嫌いだったんじゃねぇの?」

「大嫌いでさぁ。俺の大事な幼馴染、不埒な目でみやがって……でも」




でも。



それでも。




「あんな、優しい目でみてたら、こっちだって何だか切なくなっちまう。」




さっさとくっついちまえ馬鹿野郎。




こんな小言を心の中で呟いて、タイルの床に目線を移すと、ぐしゃり、と髪をでかくてごつい悔しくも暖かい手でなでられて尚のこ
とムカついた。
『大人』って感じがするところもムカつく。俺の気持ちも見透かしてる感がするのも嫌だ。それ以上に、あの人に親友とか家族とか
友達とか、そういう枠じゃあなくて人としての一番にこれから立つであろうことが、すっげえ嫌だ。
親友で、兄貴で、大切な存在だったのに。
近藤さんと俺と3人でいつもどんなときも一緒にいたのに。
一番になるのは、不本意ながらこの男か。あームカつく!!
あの人が、コイツに惚れた訳はなんとなく分かっている。悔しいけどカッコいいもんな。芯が強いもんな。大事に、してくれるもんな。



「さっさと振られやがれ」



「手厳しいのね」



苦笑いみたいなものが上から振ってきて、更にイライラが募った。
てか、いい加減、手離せよ。



「アリガトな、沖田」
「黙れ」
「俺、頑張っちゃう」
「本当に黙れ。死ね。振られろ」



今度は本当にクスクスと笑いが聞こえてきて、なんだか情けなくなった。




こんな男の何所がいい。 本当の答えは多分、俺の愛しい幼馴染しか知らないけれど。それでも、あの日偶然見たあの表情は、その正解の中に含まれて
いるに違いない。




ああ、畜生。



泣かしたら、ぶっ殺す。



全力で邪魔してやるから、覚悟しておけアホ教師。















END 銀沖じゃないです。(ヤメロ)










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