出逢いからして、最低最悪だったのだ。





02: 思いがけない暖かさに





アイツを見ていると、イライラする。
どうしようもないくらいの適当な授業に、態度。煙草を吸いながらの授業はさすがに驚いたが、最近ではそんなこともなく一種の慣
れ、のような物が起こっている。出席の確認でさえスムーズに運んだためしがない。てか、多串って誰デスカ?

その上、出逢いも最悪だった。

そりゃ、あんなに桜が満開で散りまくりの地面の上でコンタクトを落とした自分の馬鹿さ加減も呪ってはいる。アイツが近づいてきた
のだって『困っている生徒』がいるという親切心だったのかもしれない。


けれど。


探そうとしておもいっきしコンタクトを割っては意味が無いだろう……!


その時点で俺の運命は急速に面倒くさい方向へ進んでいっているはずだ。
無理やり1年で学級委員。2年で生徒会。3年でも生徒会。そして、年中部活に果ては受験。
……まあ、受験の方は頭がしこたま悪いというわけではなく、学年で10番以内に入るようにはしているのでなんてことは無いけれど。
煙草を見つかったのも悪かったと思う。
まさか鍵付の屋上に先生が来るなんて思いもしなくて、悠長に吸ってたし。まぁ、コレは黙認、してくれててありがたいけど……。
それにしても、何故自分の人生最大の青春であろう高校時代が華々しくギンパのマダオに侵されているのだ……!!



そして、今現在俺は何をしている?



生徒会室の机にくまなく並べられた書類と綴じ込み用の大きなホチキス。
目の前にはこの前の小テストの採点をするアホ担任。
おれとコイツ、二人きりで?他の生徒会役員?サボりだろうよ。まともな奴はいねぇしな!!
そして、この馬鹿は一向に手伝うという気もお越しはせず、のろのろとテストの採点中。採点という、担任、いや教師としての仕事を
すれば、俺が文句を言ってこないことを重々承知しているから性質が悪い。


あぁ、もう。このムカつきはなんなんだ。


思えば、コイツのせいで俺の人生狂ってる気がする。絶対そうだ。むしろなんで俺がコイツごときに一挙一動しなくちゃいけないんだ
よ。俺の思い出はコイツ一色か?!……あ、なんか変なこと言ったかも。


「お お ぐ し く〜ん」
「区切って呼ばないでください。てか土方ですから」
「眉間にいつも以上に皺よってるよ〜。悩み事?ほ〜ら先生に話してごらん。カマン」
「眉間の皺はいつもの事です。悩みなんかないですから」


むしろ『カマン』てなんだ。両手広げて待ち構えんなキモイから。
あぁ〜、早く終わらせよう。で、さっさと帰ろう。こんな時間じゃあ部活なんてぜってぇ出られないし。全開の窓から夕日が差し込んで
きてるし。カーテン閉めようかな。あちいな……。


ガション。



最後の綴じ込みを終えて、余ったプリントを縦横交互に重ねていく。仕上げに、机にトントンと形を整えた。その様子をアホ天パは
じぃっと見ていたが、気にしない。


「でもさ、多串君」
「だから、多串じゃねぇって……!!」

「疲れない程度に働きなさいね?」

「………ッ!!」


ぐしゃり、と頭を唐突に撫でられる。
は?
今コイツは何をした?
頭とか、撫でちゃった?
ガキ扱い?
……何、なんな訳、コレ。すっげムカつくのに、いやに顔赤いんだけど。


「……疲れさせるような仕事持ってくるのはアンタだろ」
「ま、そうだけど。あ、俺職員室行くから戸締りよろしくな〜」


苦し紛れを隠した俺の憎まれ口に苦笑いしながらもう一度ポンポン、と頭を撫でて生徒会室を去っていく。
パタン、と扉が閉まる音がしてアイツの気配が消えた。






あぁ、
ホント。
なんな訳?
顔とかめちゃくちゃ熱くねぇか?
なんなんだよ、いつもは全然労わったりしてこないくせに。今みたいな事だってしたことがないくせに。



3年間。
必死こいてこの気持ちに気づかないようにしてきたのに。



あぁ、イライラする。



あんなことしてきたアイツにも、だけど。




それ以上に、





3年間、この気持ちに名前をつけるのが怖くて、怖くてしかたがなかった、弱い自分に。
イライラしてたのは、きっと。






きっとアイツが好きだったからだ。










思いがけない暖かさに、気づきたくなかった想いを気づかされた。











END

乙女な…










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