君を見つけた記念すべきあの日からとうとう三年がたつんだ。
そう。
あの日から、もう三年になる。







01:君を見つけてしまったあの日






桜が舞い散る校庭を、俺、坂田銀時は走っていた。日にちは4月9日。時刻は12:50。そう、新学期。
そして、自分が嫌で嫌でたまらなかった担任という仕事を今年は引き受けねばならなかった。今年のいやに多い新入生の
確か「Z組」だっただろうか。クラス編成は3年間あってないような学校なので、ほぼ3年間、確実に担任だろう。
入学式の開始時刻はあと10分後。そしてここは校庭。職員玄関から猛ダッシュして10分。間に合う保障はあまり無し。
てか、無い。はっきり言ってもう嫌。実はサボるつもりだったのになあ。
走っている自分の目の端になにか人影が映った気がした。
おや?と思い、足を止めて向き直ると桜の下に生徒がしゃがみ込んでいる。
桜まみれの地面にへばりついて何かを探しているようだが、いかんせん新入生のようでこのまま放っておく訳にもいかない。
ゆっくりと、いやに焦っている男子生徒の傍へと歩いた。


「おいおい、新入生。もうすぐで入学式始まるぞ〜。サボりか〜?」
「……スイマセン。ちょっと探し物を……」


これは、また。そうとう綺麗な顔ですね、あんた。
たいそうモテるのだろうなぁ。いいなぁ。いや、本当は羨ましくないけど。俺だって結構なクチだったし。
桜が頭に絡まってて可愛いなぁー……。ん?俺怪しくない??


「あ?何を落とし……」



パキン。



「ん?」

「あああああああああああ!!!」


何かが割れるような音と少年の絶叫。
恐る恐る足元を見ると、キラリと光ったのは小さいコンタクトだった。……うわ〜。


「………ごめんね?」

「………………いえ」




そのときのぶっちょう面といい、俺が担任だって分かったときの悲惨そうな顔といい、あの時からお前は俺の中でクリーンヒット。
担任になったしょうもない現実とか、ちょっと良いかな、とか思えたんだよ。
多分、この時にもう無いだろうと思っていた俺の純情恋心が君に芽生えていたんだ。














「……い。せ……せい!」

「せんせい!!」


ふいに名前を呼ばれてパッと、目を開けると3年前から随分と大人になってそして随分綺麗になった少年、土方が睨みを効かせている。
全開の窓からは心地よい春風が吹いてきて、その反動で桜の花びらが入ってきた。
机の上はいつのまにかいつも以上にごちゃごちゃで、溜まっている書類やら資料やらが散乱してしまっていた。
うたた寝をしていたせいか、頭が重い。
土方はというと、春休み中に課した宿題のプリントを抱えて俺を睨んでいる。
そういえば、LHRで土方にプリントを集めて理科準備室に持って来い。とか言った気がする。うん、言った。
サボらずにきちんと持ってくるあたりで律儀だと思う。目つきの悪い見かけによらず案外優等生なのだ。


ただ………。


「土方、俺以外いないからってさっそく喫煙はどうよ」


机に空きスペースを作り学ランの内ポケットから出した煙草に火をつけている。セブンスター?結構キツいの吸っているよね。
屋上での喫煙を見つけ、注意もせずに黙認をしていたらいつの間にか自分の前でだけ喫煙をするようになった。
見つけた瞬間のあの表情とかその後のビビっている態度とか。いつも落ち着いている優等生の君にはあるまじき態度だったけれど、俺が
故意的に黙認しているのだと気づくと、そうそうと悩むのを止めたらしい。
それ以来、屋上や、この理科準備室。はては見つからないような木陰で喫煙を貪っている。
彼がそれほどまでに気を許しているのだと、自分にとって言い様に解釈してしまう自分の脳内を嘲笑った。
そう、あの喫煙を見つけてからもう3年。
君への気持ちを初恋のガキのようにひたすら隠して、3年になるんだ。


「多串君」
「土方です」
「春だよ〜。桜舞ってるよ〜。」
「聞いていますか?先生……」
「………もう、3年生だよ。土方」
「………」


これから、君と進路の話とか未来の話をたくさんするのだろうね。
そして君は巣立ってゆくんだ。

その時はまた桜が舞っている。君と出会って4度目の春になる。散っていく桜と一緒にこの想いに卒業なんだ。
真面目に笑って本名を呼んでやると、土方は銜え煙草のまま何とも言い難い表情をしていた。


「また、1年よろしくね〜。頼りにしてるよ生徒副会長殿」
「よろしくしないでください」


またいつものだらけた口調と態度に戻して、彼の柔らかい髪の毛をぐしゃぐしゃ撫でてやるといやそうな悲鳴が上がる。
それでも、この手を振り払わない君の優しさに心底安心した。




ねえ、土方。
君と出会ってもう3年になるね。
君を見つけてしまったあの日から、あっという間に時は過ぎていった。
最後の1年。
俺は多分、君への気持ちをひたすら隠して君を送り出そうとおもっているんだ。



ねえ、土方。
大好きだよ。
少しでも気づいて欲しいというこの願いは、君とであったあの日に封印したはずだから。


だから、


また、俺のところに煙草を吸いに来てよ。









たったソレくらいの君と俺の秘密の交流が、めちゃくちゃ大きな俺の救い。













NEXT



始まりました!ほんわか。でもせつなめ路線で。


















SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送