幸せなんです。





10: もう見失ったりはしない。





俺が土方に想いを伝えて、さらに成就してから2週間がたった。
あの夜、泣きはらした目にたくさん口付けて路駐していた車で彼を送った。翌日から、満面の笑みの近藤や、ぶっちょう面の
沖田やら、いろいろな反応を見せる面々をみて、当事者以外皆が知っていた片思いだったことが分かった。
気づいていなかったのは本人達だけ。
はたからみれば両想い。
そういわれたときの土方の真っ赤にした顔は忘れられそうに無い。
そして現在は、俺と土方しか居ない生徒会室。やはりサボりの他役員。逃亡した沖田と補習の近藤もろもろ。
あのころと少し違うのは、張り詰めた緊張感とか偽装工作なしで彼が微笑みかけてくれること。多分、ここに俺たちのことを知って
いるやつらが入ってきたら、一目散に逃げるだろう甘い雰囲気をかもしだしていること。
甘い雰囲気は無意識のうちにでていて、意識的に長時間ださせている、そんな感じ。

「トシくんさー」
「土方です、せんせい」
「全然、先生と遊んでくれないよね」
「……俺の学年知っていますか先生…」
分かっているよ。3年生でしょ?予備校でしょ?最後の部活でしょ?!
だから我慢してるじゃん!公私も分けているしね。鉄則。学校では先生と生徒。卒業するまでばれる様なことはしない。
先生はこれを必死で守っているつもりです。
じーっとジト目でみると言葉に詰まったような困ったような表情でプリントの綴じ込みをしていた手を休めてくれた。

この2週間で分かったこと。

君がとても優しいこと。
とてもとても一生懸命なこと。
そして、
やっぱり俺は君が大好きだってこと。

「来週、なら。そっち行ける」
「………まじ?」
「まじ」

驚きすぎて目が点になる俺とふわりと笑う君。その笑顔にさらに俺はびっくりなんだけどね。
時折、本当に優しい笑顔で笑ってくれる。それを引き出しているのが俺だということが本当に嬉しくて。まだ俺にもこんなにも純情
な想いがあったのだとかしみじみと思って、自分自身も優しい気持ちになった。
幸せすぎる今の状態が、心地よくて、心地よくて。
他愛も無い会話とか、ふと見せる仕草でもドキドキする自分はきっとまだ恋の延長線上にいるのだと思う。

「じゃあ、電話しよ。メールでもいいけど、声聞きたい」
「わかった」

恥ずかしい言葉も、彼が相手ならスルっと出てしまう現実に、なんだか苦笑い。
その言葉を最近、真顔で対応してくる君に、慣れって怖いよねとか真剣に思ったりした。
抱き締めたコイツはとても暖かくて、触れた唇は柔らかかった。
俺を見つめる瞳の想いが嬉しくて、名前を呼ばれると胸が痛くな
る。回された腕が愛しくて、ひとつひとつ確認していって、やはり俺はこいつの全部が大好きなんだと確信する。
惚気って言われても仕方がないことのうのうと言っていると思うけれど、言いたくなるほど幸せ、ってことなんだ。

「ねートシ」
「ん?」
「ちゅーしよ」
「………はぁ?!」

満面の笑みでそう述べた俺に、信じられないものを見るようなトシ。失礼だなあ、というと問答無用でプリントで頭を強打された。
……半端なく痛いんだけど!!!何このプリント……!!
笑い事じゃなくて、冗談とかじゃなくて!!マジで痛いんだけど!!!

「〜〜〜〜っ!!」
「……ふん」

不遜な態度で俺を見て、涙眼の俺を見下ろした。
恨めしげな目で見るとしかたないなあ、とでも言うように盛大な溜息。ごめんね、大人っぽくなくて。ガキっぽくって。
さらに甘さを求めてもいいと思うんだよね。
だって俺、甘味大好きだし。禁煙のときに食べ始めたんだけどさ、これがまた美味しくて止まらなくなったんだよね。結果的に禁
煙は半分成功、だったけれど。……本数が減ったんだよ。これでも。いい傾向だと思うけどね。

「ぎん」
「え?!」

ふわりと唇に君の感触。
ネクタイを思い切り引っ張られて触れるだけのキスをする。逃げようとする君を捕まえてさらにキスを延長させる。
首に回される腕に、胸がきゅっと締まる感触がした。
息が出来ない、とばかりに背中をドンドン!と叩かれてわれに返る。あわてて唇を離すと、何故だか微笑む君が見えて。



やっぱり、幸せだと思った。















END

完結…。こんな彼らであってほしいです!……番外編、書いちゃ駄目ですか。(止めとけ)















SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送