「毎日毎日仲良しですねい」
「本当だなぁ!」
その会話が、俺の思考をフリーズさせた。


 喧 嘩 上 等 十 課 題


「……何所に目をつけたらそうなるんだ?!」
「顔に目をつけたらそう見えやす」
「トシ〜、目は顔にしか付いてないぞ!」

昼食の弁当を突付こうとしていた箸を止めてジト目で幼馴染の二人を見る。この二人、近藤勲と沖田総悟
は家が近所、親が友達、幼稚園から高校までずっと一緒だ。そのうえお世話になった産婦人科まで一緒
なのだから異様な腐れ縁としか言いようがない。まあ、総悟と俺の場合は小さい頃に親を亡くしていてお
互い兄弟に育てられていたから、近藤さんの親と俺や総悟の兄ちゃんやら姉ちゃんが仲が良いとも言う。
それにしてもさすがは幼馴染だ、俺のこの目つきの悪さにびくともしない。しないどころか明らかな皮肉を
文章があたかも俺が間違っているかのように会話を続けようとしている。
いや、こんな会話に発展した原因ははっきりとしているのだ。
普段は執行部の連中に、というか主に桂に、仕事をしろと引きずられていく我が校の生徒会長である坂田
銀時が珍しく教室で昼食をとっている。購買の戦争を勝ち抜いてどっさりと買った菓子パンに齧り付いてい
るコイツがいるのは不本意ながら俺の隣だ。コイツの仲間である高杉や坂本、そして桂はそれぞれ思い
思いの場所で朝食をとっているらしい。

「いや、だから!!」
「毎日のようにひっついて痴話喧嘩してたら立派な仲良しさんですぜぃ?」
「そうそう、俺とお妙さんのように!」
「………まあ、近藤さんが言ってるのはちょっと違いやすが」
「なんで!」

パクパクと弁当を食べながら平然とのたまう幼馴染。
あまりのことに放心して弁当に手を付けられていない俺。なんて差なんだろう。

「沖田君よく見てるじゃん」
「そりゃあ毎日のように目の前でイチャコラされたら、ねえ?」
「あら、銀ちゃん照れちゃーう!って訳で、やっぱ俺ら早く籍入れるべきだと思うよ、多串君!!」
「誰が多串だ!熨斗付けてくれてやるっつーの!」
「返品届けつけて変えしまさぁ」

校内の女達をクラクラにさせる必殺王子スマイルでもって撃沈した銀時は慰めてよーとさらに引っ付いてく
る。ああ、面倒くさい!!なんでコイツはこうなのだろうか。女癖の悪さは校内で1位2位を争うほどの女た
らし。そのくせ実は文系方面の勉強は驚異的に出来るが理系は典で駄目。それなのに不真面目でサボ
りなんて日常茶飯事。でも人望はとてつもなく驚くほどあって生徒会長。
なんてアベコベ。
なんて変てこ。
……なんで、俺にこんなに訳の分からない行動をしてくるのか、本当に謎だ。

「だー!!本当に離せ馬鹿!!キモい!」
「大丈夫、俺は全然キモくないから!むしろカッコいいから」
「真顔で自分で言ってんなコラ」
「事実ですー……痛!!」

真顔でウザイことを言おうとした銀時の頭に突如竹刀が振り落とされた。
恐る恐るそんなことをした張本人を見ると、我が剣道部の顧問であり、生徒会顧問でもあり、さらに学年主
任であり、そして生活指導な松平先生がジャージにサングラス姿で仁王立ちしている。
その姿は威圧的でとてつもなく恐ろしい。
何所に行ったって追ってきそうな威圧感がある。それに、自分の部活の顧問というのはどうしたって脅威
の対象ではないだろうか。
一方の銀時はそんな松平先生の様子に怯むことなどなく相変わらずマイペースに頭を摩っている。

「さかたぁ……おめえ昼休みは俺と黒染めっつったろーが?あぁ?」
「……やだなあ、とっつぁん。コレ、地毛だって何度言ったらわかんの?もしかしてもうアルツ?」
「上等だコラァ……。まずはその腰に引っ掛けたスラックスを上に上げてだらしねえワイシャツを中に突っ
込んでやるよ!!ついでにその暴走した下半身も直してやらぁ!!」
「おしゃれに疎いから栗子ちゃんに洗濯物一緒に洗ってもらえないんじゃねえの?」
「お父さんの服はそんなに汚いのか栗子ぉぉぉ……!!」

そう言葉で飄々と言いくるめて広げていた菓子パンの空き袋をさっさとゴミ箱に入れてしまう。
打ちひしがれる松平先生を横目に静かに教室の扉まで移動した。
「トシ、」
「あぁ?」
「放課後、部活終わるころそっちに向かえ行くから一緒に帰ろう」
「ぜってえ、来るな!!」
「あいらびゅー!!」

ちゅっ!と投げキッスをしてくる銀時の様子に沖田は腹を抱えて笑っている。近藤さんはいつものことだと
いうように苦笑いだ。
松平先生が銀時が居なくなったことに気がつくのはいつになるのか。




ああ、もう。
本当に。


結局、銀時が迎えに来るのを待って一緒に帰ってしまう俺は、

馬鹿だと思う。





……これは、絆されてしまっていると言うことなのだろうか。







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ほだされてますよ。



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