見つめ続けていられるのなら。

 

 

 

 

 

09: 我慢など苦にもならない

 

 

 

 

 

本日も晴天。風もほのかに心地良い。いつもの日常にしては平和な日。
今日も今日とてストーキングに行っていた真撰組局長は、屯所内の縁側でぼけっ、と空を見ている。
その隣に茶を持った俺が腰掛けると、ゆっくりと振り向いて微笑んだ。
……すこし頬が腫れている。
この人が女にハマって傷つくのはいつもの事だけれど、それを見ている俺はこの人が傷つくのを見るのはいつまでも慣れない。

 

「トシィ」
「あ?」
「ケツ毛が濃いのがあの人は不満なんだろうか……」
「………」

 

いや、多分もっと別次元でアンタのことどうも想ってないと想うよ?
なんて言葉は茶でゴクリと飲み干して、無言で返事をしてみた。本人は良い様に解釈をしたらしく「そうか〜」などと落ち込んでいる。
ウジウジしてはいるけれど、恋をしている時のこの人はいつもの何倍も生き生きしていて。
ここ十数年一緒に居た中で、とても好きな表情をしている。
その点では、彼女にも敬意と感謝をしている。きっと、俺にはこんな表情はさせてあげられないのだから。

 

「そうそう、トシ!聞いてくれよ、この前な!!」

 

あぁ、また始まった。
この人と、彼女の間での出来事。ほとんど虐げられているようにしか聞こえないけれど、本当に幸せそうに話している。
そんな彼が、

 

とても好きでいる。

 

幸せお惚気話が続く中、キリキリと痛むのは胸と胃で。
けれど、幸せそうな彼の表情は悲しいくらいに大好きだから、溜息を茶で無理やり流し込んで無表情を装った。
決して。
そう、決して苦しくないわけではない。苦しくない、と言ったら嘘になる。
どちらかといえば、苦しい方が上回ってしまっているし。心のそこから思いを叫びたい時だってある。

 

苛立ちからの込み上げる吐き気も。

 

ふいに緩む涙腺も。

 

つい、言ってしまいそうになる本当の気持ちも。

 

まだ、まだまだ我慢できる。
隣で、こんなにも楽しそうに話している彼を見て、まだ笑っていられる。こんなにも、気持ちが舞い上がる。

 

「お?こんな時間か」
「みたいだな」
「休憩も終わりだ」
「みたいだな」
「見回り、行くか?トシ」
「だな」

 

一歩前を歩く堂々としたこの人の背中を見つめた。今日の俺は大丈夫だっただろうか?いつもどおり笑えただろうか?
胸のうちのこの問いに答えてくれる人は居ない。
この苦い思いから、開放してくれる人も居ない。
そして自分はこの苦い思いを引きずって生きてゆくのだろう。

 

 

 

 

 

決して。
そう、決して苦しくないわけではない。苦しくない、と言ったら嘘になる。
どちらかと言えば、苦しい方が上回っているし。心のそこから思いを叫びたい時だってある。

けれど、

この後姿を見ていられるのなら。
見つめ続けていられるのなら。

 

 

 

 

 

 

 

我慢なんて、苦にもならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

END?

 

 

あとがき。
うわ〜苦い。苦い!!!
あいも変わらず、いやに行間が開いております。

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