叶わないことくらい、分かってる。

 

 

 

02: 叶 う 筈 も な い 想 い 

 

 

 

今日も今日とてうちの馬鹿大将は女の尻を追い掛け回してリンチにあっている。
泣く子も黙る真撰組の局長が、こんなのだと知られた日には組織も壊滅だ。
まぁ、本人もそれを踏まえてか、私服で勝負に挑んでいるしそこら辺は差し支えは無いだろう。

と、言うか。

あの人や、妙とかいう女には差し支えはないだろう。
何故に俺がここで猛烈アタックの行く末を見届けねばならないのか。
答えは簡単。
俺があの人の事を慕っているからだ。

 

 

上手く、いかないで欲しい。
早く終わって欲しい。
「また、駄目だった」って、俺に笑いかけて欲しい。
けれど、傷つかないで欲しい。

 

 

何本目かの煙草を道端に捨てて、ぐりぐりとブーツの先で火を消した。ブレザーの内ポケットから煙草を取り出す。
やけに軽いケースの中にはもう最後の煙草が入っていた。
本日ラスト。買い置きは無い。
吸おうか吸うまいか迷っていると、死闘を終えた近藤さんが戻ってきた。
明るい笑顔で、きっとまた。

 

「あ〜、まぁた駄目だった……。見回りして、帰るかトシ」


ほら、こんなにも楽になる胸の奥。
けれどその分、痛くなるのはきっと心底好きだからだ。

 

「おう。行くかい、馬鹿局長」
「おう。行くともよ、鬼副長」

 

隣を歩くこの人は、俺が知っている限り女が好きで。
とても優しくて、人の気持ちに敏感だから。
きっと、長年のこの想いに気づいている。
けれど、この人は優しすぎるから俺がアクションを起こすまで、知らない振りをしてくれる。
俺が気持ちを伝えるその時までは。
なら俺はきっと言わない。
俺の中で、けじめがつくまでは。
この人の中で『親友』という位置にいたいと願う以上は。

 

 

『昔、アンタのこと好きだったんだぜ?』

 

 

とか、過去形で語れるようになるその日まで。
俺はきっと、アンタには言わない。

 

意を決して、最後のタバコに火をつける。一息大きく吸って、大きく吐くと曇り空に上っていった。

 

 

叶わないことくらい分かっている。
無駄な足掻きさえも出来ないこともわかっている。
この気持ちに、応えてくれないことも分かっている。


だから、


だからどうか。

もう少しこのままで居させて欲しい。
馬鹿笑いしているこの人の隣で。

 

「何か食ってくか?」
「近藤さんのおごりなら」

 


こういう馬鹿話をして、右手に煙草を挟んで、隣を歩いて。
天まで届かない煙草の煙を、俺の気持ちにたとえちゃったりとか。
そんな酔狂なことをしていられる関係のまま、そのままで居たいと願う。
この人の中で、俺の想いが小さなシコリになっていたとしても。
この想いでこの人のおき楽人生がちょっとでも悩んでいてくれているなら。
叶うはずも無い想いなら、もう少し。

 

ほんのちょっと。
 

 

 

 


この女ボケを困らせてやろう、とか思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

前向き片思い土方くん。きっと近藤さんは気づいてると思います。
カリスマリーダーなら、人の気持ちとか分かりそうですし。家の近藤は人の気持ちに敏感なお人よし。
土方は前向きに生きようと試みてるちょっとアホの子。
を、テイストにしていきたい!けど、あきらかに腹黒いですよ、土方さん!!

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