銀土で甘。




「ぎゅって抱いてキスしろ」
「は?」

ガンガンと叩かれた玄関の扉を面倒気に開くと、目の前には愛しいハニー。
暫らく出張で会えなくて、本当に久しぶり。そんな、目に入れても痛くない恋人が、上目使いでこんな言葉
を言ってきたら、理性とかそんなものよりまずビックリしませんか。
付き合ってもうすぐ1年。
こんな言葉を言われたのは初めてなんですけど!!
口を開けば斬る、切腹しろ、死ね、天パ。でも行動に愛が表れているからあんまり気にしていなかった。
素直じゃないけど可愛い恋人。
それが、こんなに直接的な言葉を吐くなんて!
なんだろう、地球が終わるのかな。もうすぐ大きなショックが起こるのではないだろうか。

「おい」
「………っはい!!」
「はやくしろ」
「……そりゃあもう、遠慮なく!!」

大きく腕を広げられて催促されるものだから、勢い良く抱きついた。
他人が居れば、もう耳と尻尾がぞんぶんに揺れているような、そんな状態。
ぎゅっと抱いて、頬に、額に、唇にキスを落とすとほっと力を抜いて胸に体重を掛けてきた。
久しぶりのトシの感触に頬が緩む。
髪を撫でると、頬擦りしながら頭を預けてきて何だか小動物みたいで可愛かった。

「あー疲れた」
「お疲れさん。でもいきなりどーしたの?」
「上の連中の厭味が、今回は酷かった」
「うん」
「セクハラも酷かった」
「……え?!」
「死ぬかと思った」
「そんなに酷かったの…?てかセクハラしたの誰よ。銀さん殺りにいってあげるよ」
「ちがう」
「は?」
「銀時切れで死ぬかと思った」

……………え。

なに、なんなの。
殺し文句って言うか、パニックで頭が真っ白だ。
擦り寄ってくる黒い物体は、本当に俺の恋人なのか。某S星の王子様がなにか薬でも使ったのか。
いや、奴はどう考えてもこんな俺の為に成るようなことはしないだろう。
着物の合わせ目を、くいっと引っ張られてトシに向き直る。

「銀は?」
「……っおれもだよトシーーー!!」

そう言ってぎゅううっと抱き締めると、ぎゅうっと抱き返されて幸せの絶頂。
このまま寝室まで運んで、あわよくば…なんて狙っていたら、途端、ふっとトシの身体の力が抜ける。
慌てて支えなおすと、見えたのは安らかな寝顔と目の下の隅。
これは、もしかして。

「………寝なさすぎて寝惚けてたな、コイツ」

心底残念そうに溜息をついて、仕方がない、と横抱きに支える。
スヤスヤと眠る一方で、着物は掴んで離さないトシに顔が緩む。
無意識でココまで来てくれるくらい俺のことを思っていてくれているのだと。
ちょっとは自惚れて良いのだろうか、なんて。
思っているだけで口にはだせないけれど。

「大好きだよ、トシ」

だから、ゆっくりオヤスミ。




突発的に小話。
実は居間に子供たちがいますが、そんなことはまったくノータッチなお二人さん。
バカップルがもう少し出したかったのに!!やりきれない。






八土です。




「ひじかたです」と名乗って準備室のドアが叩かれる。
準備室と言ってもほとんど俺の巣窟と化していて、周りは本に覆われている。図書室の隣にある辺鄙な
俺の孤島。人なんてめったに来ないし、俺自身もあまりココには寄り付かないけれど、今日だけは勝手
が違う。本日は、先日内密に恋人になった、教え子土方君の訪問日なんです。
明日からは連休で、珍しく部活がないらしい。よって、今日からお泊りで俺のうち。
帰りは一緒に、って俺が我儘言ったから部活が終わったら訪問の約束。
でも、今日はミーティングと軽い練習だって言っていたから予想よりも早い訪問だった。

「早かったね、おおぐしく…ん?」
「おー」

くるり、とドアに向き直って絶句。
なんですか、なんなんですかこの格好。

「か……」
「か?」
「かーわーいーいー!!」

いつもの制服になんら変わりはなく、問題は髪型。
少し伸びてきたと言っていた前髪がひとつに結ばれていて、かわいいリボンが付いている。
その髪を押さえるように花の飾りが付いたピンで留められていた。
白いオデコが丸見えで、いつもと違った顔つきになっている。

「帰りがけに志村と神楽に捕まった…。近藤さんと総悟も裏切った」
「姉と神楽か!ぐっじょぶ!!」
「どこがだ!!」
「でも『前髪邪魔だ』って教室で言ってたからじゃない?」
「けどリボンはないだろ!報復が怖くて外せないし」

はは、と苦笑いしてトシを中に押し入れる。ドアを閉めて、ついでに鍵も閉めておく。
校内デートは細心の注意を。これが鉄則。
ぎゅっと抱き締めて、開いているおでこにキスをすると、音を立てて真っ赤になった。

「明日も、これにすれば?」
「絶対やだ!」
「じゃあもう少しシンプルにしてやろうよ。やってあげる」
「だって明日出掛けるだろ?だから嫌だ」
「うーん。家に居る間は?連休なんだし!」
「うー」

渋るトシにまたキスをして、ふと時計をみるともうすぐ下校時刻。
俺の仕事は今日のためにがっつり終わらせてあるし、多少追加が出たってもともとヤル気なんてない
から今日はもう上がったって大丈夫だろう。

「でも今日はこのままね。いつもん所で待ってて、すぐに車回すから」
「……わかった。じゃあ先に行ってるな?」
「おっけ」

出て行こうとする彼をもう一度引き寄せて、軽く触れるだけのキスをする。
真っ赤になって、それでもはにかんで笑う姿が可愛かった。
後ろ姿を見送って、白衣を脱ぐ。その辺に放って、帰る仕度をした。

幸せな休日は、もうすぐやってくる。




ちゅーちゅーしてばっかです。なんだコイツら!!



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