君に届け、この想い!!



君が好きだと叫びたい!



「っあーーー……死ぬ。肩こりで死ぬ」

夏の初めのとある午後。
昨日から追い詰められていたたまりに溜まった書類の山と必死に格闘すること長時間。きっともう二桁に
突入しているに違いない。
時間外労働にもほどがある。なんでうちの組には頭脳派が少ないのか。自分だってそこまで頭脳派という
わけではない。なのに周りが書類から逃げるからコッチに回ってくる。
実際目もしょぼしょぼだし、肩も重い。書類も片付いて、あとは山崎をパシるだけだ。
ふと、ぼーっとしていた耳に誰かが遠くで喚く声が聞こえた。

「………っ………っ」
「…………っ……!!」

「……あ?」

なんだか外が騒がしい。ドタドタと何かが起きているようだ。
正直メンドクサイ。このまま眠ってしまいたい。でも行かないと後が大変だ。
無理やり身体を起こして、襖を開けるとなにか速いものが目の前を通り過ぎてその瞬間に大きな爆発が起
こった。思わず耳を塞ぐほどの轟音に、目を見張る。
辺りを見回すと大慌てした山崎がコチラへ走ってきた。

「ふ、副長っ!!逃げてください!!」
「………なんだ、テロか?!」
「そうっていうか、そうじゃないっていうか!!とにかく逃げましょう!!」
「意味分かんねーよ!お前本当に監察かッ!?」
「監察です。いや、本当に。あの人が来る前に!むしろあの人たちが来る前に!!」
「はぁ?」
山崎の言っていることが分からない。
寝不足だからとか、そう言うことではなくて本気で分からない。と、不審に思った途端にまた目の前に閃光
が走り、爆音が響いた。

「………あっぶね!!」
「だから逃げようって言ったじゃないですか!」
「なんで喧嘩の前ににげなきゃなんねーんだよ!!」
「そう言う問題じゃなくてですね……!?」

敵前逃亡は士道不覚悟。
隊則にだってあるのにこのオレが守らなくてどうするのだろうか。
なんだか埒が明かない会話をしているところに、今度は爆音の原因がバタバタと走ってきて、身構える。
山崎を見ると、気の毒なほどに顔が真っ青だ。

「おおぐしくん!!」
「坂田ぁ??」
「山崎!おめぇホントにトレェやつだなぁ、おい!」

鬼気迫る様子で、全速力の追いかけっこをしている総悟と坂田に唖然とする。
そのままのスピードでいきなり坂田に肩に担ぎ上げられた。

「……んなっ!!」
「軽い!!軽いよ多串君。甘いもの取ったらきっと太れるよ!?もっと太んなきゃ!」
「いや、食べても太らないんで……って早く下ろせ馬鹿!下衆!」
「土方さんの言う通りでさぁ!」

その掛け声と同時に本日3回目の轟音(オレが聞いた範囲内で)。
って、それオレにも向かっているんですけどぉぉぉ!!

「……ぬぅを!!」
「うわ!!」

間一髪で坂田が避けてセーフ。
と思ったのもつかの間、ヤツの肩の上でよろけたせいで坂田ごと床に転げてしまった。けれど思った以上
の振動がないのは坂田が俺を庇って瞬時に下敷きになっていたからだった。
………いつもはヤル気がないくせにこういう時だけはいやに頼もしい。
いつもこういう気迫な隊士が真撰組にもいてくれたら俺だって大助かりなのに。コイツは駄目だ。ムラがあ
るから、扱いにくいし。
「………っいつまで土方さんに引っ付いてんでさぁ!!」
「ほら、旦那!さっさとどいてください!」
「おーぐし君大丈夫?弟さん、強暴だね」
「ああ、スマネェ、大丈夫だ」

続いて狙いを定める何故か怒った総悟を山崎が止めながら坂田を促す。
オレは坂田からどいて手を差し出すと、こちらも何故だか少々戸惑った様子で握り返してきた。

「総悟、お前もなんなんだ?いきなりこんなにぶっぱなすなんて」
「他の隊士はもう戦闘不能なんで、サブボスの登場なんでぃ」
「お前、言葉通じてる?ねえ!よく分かんないんですけど!!」
「あー……。旦那が組の連中を激情させる事を言ってきたので、案の定あいつらが怒って攻撃が開始。後
に旦那の独り勝ち。残ったのは沖田さんだったと。ちなみにラスボスは局長です」
「はぁぁ?」

坂田が隊士をキレさすような事を言い、案の定逆上。坂田が隊士をこてんぱんに熨したものの、最後に相
互が残っていて、その戦いがコレ。
と、言うことはどう考えても。

「お前がわりぃんじゃねえかぁぁ!!!何言った、お前!!」
「いや、それはさーあのーさー」
「目が泳いでるじゃねえか!お前なんのつもりなんだよ!!」
「うっせぇ!!心の準備ってもんがあんだよ!!」
「……そんなに言うのも躊躇われることを言ったのか!?」

うちの隊士をそこまで怒らせるうえにオレに言うのを躊躇うってどういう事だ?
答えを求めるように総悟と山崎を見ると、困ったような山崎と、ぶち切れ状態で目が半ば据わっている総
悟が居た。そして問いかけられない雰囲気。
コレは何を言っても言うつもりはないということだろう。と、言うことは必然的にこのアホに聞くしかない。

「早く言え天然パーマ」
「あーうーだーかーらー」
「おいこら腐れ天パ、それ以上言ったらこの世には居ないと思いなせぃ」
「総悟は黙ってろ」

一喝すると、見るからにシュンとしてなんだか気の毒になった。
とりあえずポンポンと頭を撫でる。それから気を取り直して坂田に向き直ると、思わぬ真摯な表情が目の
前にあって戸惑った。

「す………す…」
「酢?」
「す……」
「おま、大丈夫か!?顔真っ赤だぞ!!」


「好きだ!!」


「は?」


そういいながら大声量で叫んだ。
いやいや、言っている意味がよく分からないのですが、坂田さん。

「おま、何言って…」


「トシィィィ!!坂田家に嫁に行くというのは本当か?!お父さん許しませんよ!!」


…近藤さん、空気読めよ!!
そして疲れている俺の身体をガックンガックン揺するのは止めてくれ。鷲掴みされている肩も痛いし。
目の片隅に映った総悟が抜刀した瞬間も嫌だけど見ちゃったし。

「言っとくけど、これ本気ね。そう言う意味の『好き』だから!君が好きだと叫びたい!みたいな。」
「さっさと帰れこの銀髪野郎!これ以上近寄ったらマジにぶった切ってやりますぜぃ!!」
「おっと。じゃね、土方君。お返事はまた後日〜」
「は?!え、ちょ……」

返事も何も…。
この修羅場のような状況だけを残してさっさと立ち去ったあの銀髪を心底恨みたい。

「土方さんはオレ達のだぃ!おい、コラ山崎!お前地味なんだから旦那見張ってろぃ!」
「トシ!オレはあんな無職は認めねえかんな!!」
「……あーはいはい」


疲れたなーと空を見ると、もう赤らんでいる。荒れ果てた屯所に、また書類と悩みが増えたと溜息をこぼした。






あー……。
おい、坂田。
まあ、その告白。善処して受け止めておいてやるよ。
だから、
だからさっさと返事を聞きに来い。
……なんてな。







END
総受?むしろ総愛。家族な真撰組と未来の彼氏銀さん。あ、銀土オチだ…!
あーしょぼくてごめんなさい!!!






おまけ★

「で、結局。お受けになるんですか?告白」
「さーなぁ」
「泣きますねー局長も、隊長も」
「それは、なかなか心残りだな」
「オレはいつでも副長の味方ですけど、今回ばかりはちょっと分かりません」
「あーはいはい。オレって愛されてますよね。地味男、さっさと仕事行け」
「はいよ!!」


これで副長からの恋愛相談減ればいいなぁ……。
なんて、口には出せないオレはチキンでしょうか。


END
山崎くん、心の声。いらないオマケ。山崎書きたかっただけ。

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