いつだって、
いつだって君に恋してる。



10 月 10 日 の 恋愛 警報




「さて、今日のツイテない1位はてんびん座の貴方です。恋に関するトラブルがあなたの近辺を襲いそう。
背後からグッサリ!なーんてことにはならないように、十分に注意しましょう。特に今日は誕生日だなー恋
人になにしてもらおうかなー、なんて考えていたそんな貴方。明日には三途の川に居ないように気をつけ
てくださいね。ラッキーカラーは黒。今日はお家に居るのがお勧めです」

結野アナが珍しく甘口トークで告げた一位勧告。そして内容的に半端なく合致した占い結果。
寝巻き代わりのジンベエでケーキを食べながら見ていた占いは不吉な予言を残して言った。爽やかな笑
顔と毒舌で番組が終わり、次のニュース番組に切り替わる。その瞬間にケーキを食べようとして固まって
いた俺は我に返った。
……え、ちょっと。今日誕生日じゃん。でも、0時ぴったりに電話貰ったぞ。あの恥ずかしがり屋さんが「お
めでとう」とか言ってくれたんだぞ!「仕事終わったらそっち行く」とか言っちゃっているんだぞ、おい!!超
幸せだったのに一気にテンション落ちた。
とは言っても、一見普通の一日の始まりだったぞ。
新八は朝「おめでとうございます」なんて言いながらケーキくれたし、神楽にも「また一つおじさんね」とか
むかつくことを言われながらも飴くれたし。ババアも「今月分の家賃は半分にしといてやるよ」とか言われ
たし。意外と、良いことずくしじゃねえか?

「恋愛関係のトラブルねー……」

ざわざわとした嫌な予感がしつつも、愛しい恋人の事しか考えられていない今の俺はそんなに大したこと
でもないと片付ける。
ワンホールケーキの最後の一口を頬張って、つまらないニュース番組を消す。

「うーん。俺も意外とモテるからなー」
「そうね。銀さんは男前だもの」
「いや、そこは突っ込みどころ、っていうか」
「やーだ、銀さんったら!まだ昼間じゃない!そんな破廉恥な!」
「いや、そういう発言するおまえの方……が?!」

勢いをつけて声の方を向くと最近一番見たくない女、猿飛あやめ。通称さっちゃん。彼女が開け放たれて
いた窓から室内へ入ってくる。そういや、今日の予定しつこく聞かれたときがあったなあ。いや、俺あなた
に興味ないんです。れっきとした、可愛い可愛い恋人がいるんです。

「……って、玄関から来いよ。やりなおしだ、コラァ!!」
「玄関からじゃ開けてくれないじゃない!」
「当たり前だろーが!何度言えば分かるんだよ!」
「やだ、もう銀さん!そんなこと言われてもあたしは動じないわ。それが貴方からの愛だって分かるもの。
あなたのその辛辣な言葉も愛にしか感じない!」
「無理ですから!俺はSだけどなんかお前、Mの方向性間違ってるよ?!」
「って言うことで、銀さんにはあたしの身体をプレゼント、みたいなー」
「………女子高生か、お前は!」

ギリギリと寄ってくるメガネ娘を避けつつどうにか玄関まで連れて行く。そのまま外へ出してしまえと勢い
よく誘導すると、開けようとしていたドアが急に開いて態勢を崩した。

「げ!」
「きゃ!」

咄嗟に取った受身だったので付いた手のひらがコンクリートにすれて痛い。玄関先から思わぬ扉の開放
に思わず外へと飛び出してしまったようだ。
はっと、気がつくといつのまにやら、さっちゃんが下に居て。そんでもって頬を染めながら俺を見ていて。見
覚えのある殺気に顔を向けると、俺の目に入れても痛くない恋人が今にも切り殺そうかという勢いで俺を
見ていることに気がついた。
冷や汗がダラダラたれてくる。
いや、ほんと、結野アナ。占い大当たりです。

「やだ、銀さんったら野性的!」
「………ほーう」
「昼間っから過激なんだから」
「………へーえ」
「……ぃや、いやいや!ホント誤解です!!俺、トシくん一筋ですって!もう君と出会ってから近辺の関係
かたっぱしから切りましたから!誤解ですって、本当に!!」
「……とりあえず、」

とりあえず?

「死ね」

いやそんなキラキラした、年に1回見せてくれるかも分からないほどのスマイルを見せながら悪態つかな
いでよ。え、うそ。どうしよう。相当怒ってるって!
ぐるぐるした思考の波に囚われようとしていたその瞬間、ぐしゃっと言う音と共に香る甘い香り。思わずトシ
を見上げるともう遥か彼方に走り出してしまっている。
焦って追おうとすると、潰れた固体に目がいった。

「……ケーキじゃん。っあーもう、勿体ねえなあ!」
「……銀さん!」
「さっちゃんさぁ、俺がマジギレする前に消えとけよ。そんで、暫らく現れんな」
「……っ」

彼女の詰まった息に相当怖い顔しているのかなーなんて思いつつも、今はそんなこと頭の片隅で。
きっと手作りであろうそのケーキを投げつけてきた恋人を、必死に追おうと思った。
速度を上げて、見失った黒い影を追う。

ああどうか。
一人で泣いていませんように。









「あー走った」

ぜーはー言っている息切れと、激しい心臓の音が耳障りだ。
本当、一生分くらいマジで走った。

「知ってた?今日のラッキーカラーは黒なの。お前が傍に居なきゃ、俺は不幸の12位のまんまなんだぜ」

ラッキーカラーは黒。
今日はお家に居るのがお勧めです。

「まさか、戻ってるとは思わないって」

ピク、とデスクに突っ伏す黒い生き物が動く。
さんざん走り回って、焦って探して。携帯で連絡しようと思ったもののポケットに無かったことを思い出して取
りに来て見た。
そしたら、

「いるんだもんなー」
「………っ」
「トシは、俺が本当に浮気したって思ってる?」

首が横に触れる。
何度も何度も震えるから、近寄って顔を無理やり上げさせると歪んだ顔が目に入って、安心させるように
微笑んだ。

「俺にはトシだけだよ。寝ても冷めてもトシだけだ。いつだって、恋してる。いつだって、愛してる」
「……っ」
「でも、不安にさせちゃってゴメンネ」
「おれ、も、……ごめ……ん」
「ケーキ、ありがと。作ってくれたんでしょ?」
「ああ」
「一緒に食べてくれる?」
「……潰れちゃってるぞ?」
「トシがくれたものなら、俺が全部食べるの!」

自信満々にいうと呆然としてから、柔らかく微笑んでくれた。
ラッキーカラーは黒。
今日はお家に居るのがお勧めです。
やっぱり、あたるなー結野アナ。

「銀」
「ん?」
「誕生日、おめでとう」

ふいに触れた柔らかい感触に。
柄にもなく頬を染めたら、それこそ意外そうな顔で俺を見たアノ子は、してやったりって顔で笑ってくれた。









言葉でなんて表せないほど、君が好きだよ。
いつも、君に恋をしてる。
いつも、君を愛してる。


だから、来年の誕生日も2人で。
一緒にいたいと、思うんだ。








END
小説の書き方忘れてる?!
銀ちゃんハピバ!!!おめでとう30歳!!(アタシの中では)

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